【PARTNER’S VIEW】 株式会社ラカム / 代表取締役 浅見 孝重さま

  • by SHOPSTAFF

コラボレーションパートナーのユニークな視点やこれからの展望を訊ねる「PARTNER’S VIEW」。今回は株式会社ラカム / 代表取締役 浅見 孝重さまに、代官山ショールームスタッフの山田 桜子(以下:桜)がお話を伺いました。

 

使い手にとってのメリットを追求してできたムカラ刺繍

(桜)
MITSUBOSHI 1887では、商品に張る刺繍をつけて特別気分を味わえるカスタマイズサービスが大変好評です。改めて「ムカラ刺繍」とはどういったものなのでしょうか?

 

(浅見)
熱接着できる新しいタイプの刺繍です。1990年ごろに開発した後、熱接着の刺繍体として特許を取りました。樹脂メーカーと共同で開発した特殊な樹脂を使用しているため、熱で圧着しても固くならず、30回から50回洗濯してもとれないのが特徴です。今まで土台の生地がないと作ることができなかった圧着刺繍を土台がなにも な いのに可能にした発想が、「無から有を生む」になぞって「ム カ ラ 刺 繍」と付けました。

 

(桜)
接着樹脂が特殊なものなのですね。アイロンでメリノTシャツに貼りつけてみたのですが、貼り付けたというより、刺繍がされているように見えます。まさに「貼る刺繍」ですよね。生地自体もなめらかなままで驚きました。

 

(浅見)
はい。出発点は子供服の刺繍として子供の敏感な肌に優しいものをつくることでした。実は刺繍の裏って糸がたくさん出て見た目が汚くなるんです。色鮮やかなものほど使用する糸が多いので裏にボリュームも出ます。そうすると刺繍の裏が肌に触れて違和感がでてくるのです。
そこで、貼ることができれば裏に糸が出ないのでなめらかなまま、見た目も綺麗で着心地も損なわないという解決策が浮かびました。

 

(桜)
刺繍のデメリットを解決できたのが貼る刺繍だったのですね。

 

(浅見)
はい。デメリットも解決するだけでなく、見た目の美しいこと、不快感がないこと、耐久性があることといった使い手にとってのメリットを追求してきました。通常ワッペンには土台がつくものですが、ムカラ刺繍は刺繍そのものを圧着できます。土台があると刺繍のような見た目にはならないですし、それ自体が重くなってしまうんです。
ストールのような大きな商品は刺繍が大変で、失敗するリスクもありますが、ムカラ刺繍の場合刺繍自体は機械で作り、ストールに貼り付けるだけなので失敗のリスクも減らせます。

 

(桜)
そうなのですね。刺繍がどういう風に作られているのか知らなかったので、改めて聞くとムカラ刺繍はかなり工夫されていることがわかりました。


攻めの刺繍屋としてやってきたラカム

(桜)
ラカムさまは三星毛糸と同じ尾州地方である愛知県一宮市に本社があります。この地域は毛織物産地として発展してきました。もともと刺繍を専業とされていたのでしょうか?どのようなきっかけで刺繍製造を始められたのですか?

 

(浅見)
最初から刺繍の会社でした。1973年に私の父が創業したので、もうすぐ50周年になります。父はもともと⽑織物会社の社員でした。創業前おばが内職として刺繍をやっていたのですが、その影響で母も自宅に機械を入れて刺繍の仕事をするようになり、刺繍のおもしろさに気づいた父が本格的に刺繍の仕事をはじめました。

 

(桜)
元々ニット製造されていたお父様が刺繍の会社を立ち上げられたのですね。刺繍の用途としては衣類用でしょうか?

 

(浅見)
メインはインテリア製品の製造販売用でした。テーブルクロスやカーテンの装飾に刺繍をして販売していました。ところが、オリジナルのインテリア製品を作っているうちに刺繍加工の方が面白くなり、刺繍の可能性を追求したくなったのです。そしてその後本格的に刺繍製造に取り組み始めました。
60年代から70年代の高度経済成長期にはアパレルが刺繍のついた子供服を作るようになり、子供服用に刺繍の需要が伸びていきまた。

 

(桜)
一宮市は毛織物産地として有名ですが、織物の生産地が近いという点もメリットがあったのでしょうか。

(浅見)
そうですね。例えば多 頭式刺繍機を製造しているバルダンさんは⼀ 宮市に ありますし、機屋(織り屋)さんが刺繍に転業されるケースも多かったです。また、名古屋はメリヤス製造が戦中戦後と盛んで、近郊の縫製⼯場と刺繍⼯場とが近いと、裁断品に刺繍をしてから縫製⼯場に渡すというやりとりもしやすいので、刺繍屋が増えたのだと思います。ちなみにアメリカや中国の場 合そういった分業での縫製工程などはなく、同じ敷地で裁断、縫製、刺繍と ⼀気にやってしまいます。⼀⽅で⽇本の場合は低資本で始められた縫製業が増えたため、独特の分業体制が出来上がったのだと思います。

 

(桜)
そうなのですね。分業だからこそ特化した部分などもあるのですか?

 

(浅見)
実は刺繍も分業していたのですが、当社の場合、刺繍製造の部分で企画、生産、営業を一貫してやってきたので職人のアイデア提案がデザインにも反映できて、よりよい製品づくりにつながりましたね。どんどん自分達で作って、営業所を増やして、販路を増やして、受け身ではなく取りに行く攻めの刺繍屋としてやってきました。

 

(桜)
攻めの刺繍屋、かっこいいですね。ところで会社名のラカムというのはどういう意味なのでしょうか。

 

(浅見)
父が愛読していたRAKAMというイタリアの刺繍・手芸雑誌からきているそうです。RAKAMというのは「手芸」という意味で、父いわく出版社からも了解を得て会社名にしたと聞いています。

 

(桜)
イタリアの雑誌の名前ですか、お洒落ですね。

 


刺繍にはどこか人間の本質によっかかる部分がある

 

(桜)
刺繍を製造する上での難しさはありますか。

 

(浅見)
刺繍自体はミシンで作りますが、それをカットして整える作業は人間がやっていいます。この工程は機械よりも人の手のほうが品質もよくスピードも早いのです。しかしこれが、時間をかけたからといって綺麗にできるものでもなく、人によって仕上がりが全然変わるので特に得意な人に任せます。人を育てて見極めることが一番大切ですね。

 

(桜)
人を育てて見極めること、大変ですが大切なことなのですね。これからのラカムのビジョンや、目指すところはどういったところなのでしょうか。

 

(浅見)
刺繍自体にはどこか人間の本質によっかかる部分あるので、なくなることはないと考えています。個性を出したり、気分を変えたりしたいときに刺繍は毎日の装いを豊かにしてくれるものです。

 

(桜)
そうですね。MITSUBOSHI 1887のお客さまでムカラ刺繍のカスタマイズをされた方はみなさん喜んでくれます。

 

(浅見)
刺繍を楽しんでくれる方は遊び心があってお茶目な方が多いですよ。
ちょっとしたワンポイントとして刺繍がついていると、周りから声をかけてもらえるし、話のネタにもなるんです。

 

(桜)
会話のきっかけにも使えますね!私は特にミツバチの刺繍が細やかで美しいし、羽が光って見える糸の感じも素敵だと思っています。

 

(浅見)
それはよかったです。ラカムの刺繍製造は今までは生産性重視でした。全体としてアパレル生産量が今まで過剰だった分、これから生産する絶対量自体は減っていくはずです。
そこでどう生き残っていくかとなると、個性的でこだわりのあるものを極めていくことだと考えています。最近だと、刺繍のアクセサリーに力をいれています。3D立体刺繍ブローチというものがあるのですが、ブローチだと服を傷つけてしまう、という声をきいてシャツボタンにつけられる刺繍アクセサリーというものをつくりました。
ブローチよりもカジュアルに気軽に楽しんでいただける刺繍アクセサリーです。

 

(桜)
ボタンにつけるアクセサリーは初めてみました!これからもどんな個性的な刺繍が登場するのか楽しみです。今回はお話を聞かせてくださりありがとうございました。

 

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